センター設立三周年理事長挨拶

日中交流の新展開
張 紀潯

 日中交流はいま新しい転換期を迎えている。この新しい転換期の日中交流の特徴として「持続的交流の拡大と相互理解が必要」だということが挙げられる。
 持続的交流の拡大が日中貿易と対中投資規模から窺われる。今年上半期の日中貿易総額は2兆9753億円で前年同期比、26.19%増となった。日本の対中輸出が1兆 324億円(同15.4%増)、対中輸入が1兆9429億円(同 32.6%増)で、日本の9105億円の入超、昨年同期の対中貿易赤字の5704億円を大きく上回った。日本全体の貿易収支は3兆 111億円の黒字だが、数少ない入超国の中で中国は95年に続きトップとなっている(大蔵省通関速報)。日本企業の対中投資も止まることを知らず広がる一方である。大蔵省が6月10日に発表した95年度(95年4月~96年3月)の対中直接投資実績によれば、日本の中国への投資は770件、4319億円で、これはアジアで第1位、全世界でも94年度と同様にアメリカに次ぐ第2位、前年度に比べて件数では 21.1%増、金額では 61%増という大幅な伸びとなっている。これらの数値から分かるように中国が日本にとって名実ともにアメリカに次ぐ第2位の貿易及び投資相手国である。経済交流の量的拡大と比べて両国の相互理解が必ずしも進展しているとはいえない。中国の核実験反対で日本の対中無償援助は今年も凍結したままとなっている。また、「対中投資ブーム」が続く中で労働争議をはじめ、増値税の問題などトラブルが噴出し、対中ビジネスのリスクがむしろ増大している。
 こうした状況の中で日中両国の相互理解が以前と比べて、必要かつ重要なことである。「日中両国民間の相互理解を深め、両国の友好関係の増進に寄与する」ことを目的に私は日中両国の専門家たちのご協力を得て1995年1月10日に日中経済発展センターを設置した。当センターの特徴は、センターの運営が日中友好交流を志す日中両国の研究者、専門家によって行われることにある。具体的には定例研究会、講演会を含めた交流会の開催、新聞協力紙の発行、中国訪問団の受け入れなどの活動を通じて人的交流と相互理解を促し、両国間の不要な誤解を防ぎ、より効果的な新しい形の日中交流を目指している。95年だけで、当センターは短期訪日の中国人専門家によるタイムリーなテーマの定例研究会を4回ほど、他の機関との協力で深土川、天津、青海省など地域別セミナーや特定テーマ講演会を7回ほど開催した。また阪神大震災の被災者を救援するために在日中国芸術家チャリティー公演を日比谷公会堂(95年5月19日)浦和市文化センター(同5月26日)にそれぞれ行った。今年の4月18日に陳景新中国税務総局元局長代理を招いて行われた「中国の税制改革と外資系企業」と題するセミナーに 160人も出席したことは当センターに対する各界の期待と評価を表わしている。センターの活動はいずれも常務理事一同の協力によって支えられている。ボランディア精神がなければこれらの活動を続けることが出来ない。日中両国の相互理解も、こうした地道な努力によってのみ深められるものと思う。センターは今後も決して利に走ることを避け、当初の目的を忘れず、従来通りにボランディア精神を基礎とした着実な活動の積み重ねによって日中経済発展の21世紀への展望を切り開いていきたい。