張紀尋出版記念パーティーご出席の御礼

張紀尋出版記念パーティーご出席の御礼

張 紀潯


 本日は、お休みのところ、時間を割いてわざわざ私の出版記念パーティーにお越し頂きまして誠にありがとうございました。
隅谷三喜男先生をはじめ、発起人の諸先生方のご配慮とご指導により、本日の出版記念パーティーに130人も越す多くの友人たちがお集まり頂き、暖かい交流の場となれましたことを、心から感謝いたします。私にとって、本日は人生で最も輝かしい日であり、交流を通じて得られた感動は、一生忘れることができません。
私としては、以下のように三つの目的を持って、出版記念パーティーを準備してきました。まず、第1にパーティーの機会を利用して、これまでに私の教育、研究活動と日中交流活動を支えてきた諸先生方や友人の皆様に直接お会いし、近況を報告し、感謝の意を述べたいことです。本日の出席者には、今から28年前に私がまだ20才で大学2年生の時に始めて日本語の通訳を務め、お世話になった日本大学生選抜バレーボールチームのコーチであった高橋教授も、78年に大阪外国語大学に留学した時の同窓生である畑さん、十川さんもいらっしゃいました。また、85年に2度目の私費留学でご指導を賜った東京経済大学の先生や同窓生の持丸先生もいらっしゃいました。このように私が成長する過程において多くの先生や友人に恵まれてきました。良き先生に恵まれたことは、私の人生を大きく変え、また、良き友人を持つことの有り難さを、本日のパーティーを通じて、改めて知ることができ、に感謝の気持ちで胸一杯です。
  第2の目的は、パーティーを通じて交流を深めることです。ここでいう交流には二つの意味が含まれています。一つは、日中両国間と両国の人々の交流であり、もう一つは、友人同士の交流でございます。私は、日中国交正常化を実現した1972年に対外経済貿易大学に入学し、日本語と日本経済を学び、日中交流とともに成長してきました。そして、74年の日中スポーツ交流、78年の日中友好条約の締結、80年の日本の技術援助による日中友好病院の建設、84年の3000人もの日中青年交流など、日中両国の関係深化を示す重要な活動に私は、当事者として加わり、日中関係の重要さをよく知っています。また、もし日中間の友好交流がなければ、私の今日もありません。本日のパーティーには、中国大使館の張総領事をはじめ、陳焜旺留日華僑聨合会会長、片寄日本国際貿易促進協会理事など日中関係団体の方や74年の日中交流に加わった時の友人が多くお見えになりました。他方、本日来られた方々はいずれも私の先生と友人ですが、携わる仕事が異なるため、お互いに知らない方が多いと思います。本日の交流を通じて新しい友情が生まれるならば、私にとってこの上ない仕合せです。本日のパーティーが、心と心の触れ合いの場となられることを期待してやみません。
  第3に本日の会合を利用して、諸先生方や友人の皆さんに博士号の取得を新たな出発点とする決意を表明し、今後とも、変わらぬご指導とご鞭撻を賜りたいと存じます。
  本日の出版パーティーにご出席することができませんが、私の博士号の取得を最も喜んでくれると思われる恩人として4人の先生の名前を挙げたいと思います。王瀛生先生、岡崎嘉平先生、土屋計雄先生と高野山太作先生の4人の恩人です。土屋先生と高野山先生については拙著で触れましたので、ここでは、王先生と岡崎嘉平先生についてご紹介します。王先生は私の日本語の啓蒙の教師でした。王先生は日本生れで、早稲田大学の卒業生でしたが、母親が日本人であるがために、「文化大革命」期間中に長い間、労働者として働き、迫害を受けていました。72年に経貿大の教師となり、私のクラスを受け持ちました。大学の4年間、私たちのために身を粉にして教えてくださいました。76年に周恩来総理がなくなったその翌日にショックで、教室で倒れ、不帰の人となりました。また、王先生がかつて岡崎嘉平太先生の下で上海の日系銀行で働いたことがあり、1984年に私が、岡崎先生の代表団を世話した関係から、1985年来日後、個人的に岡崎先生から多くの恩恵を賜りました。王先生から、教師はどのように学生に接するべきかという教師の基本を教わり、岡崎先生から、日中友好事業の大切さを学びました。
  「水を飲む時に井戸堀人を忘れてはならない」。私は、本日、皆様から与えて頂いたご感動を胸に、今後も、教育と研究事業に全力を尽くすと同時に、王先生らの遺志を受け継ぎ、彼等の未完の道を歩み、日中両国並びに東アジア諸国の共生に向けて友好交流に邁進して参りたいと意を新たに致しました。 皆様方のますますのご活躍とそして、皆様方との、また、皆様方同士の絆がこれからも大切に育っていくことができますように、お祈り申し上げながら、出版記念パーティーご参加への御礼の挨拶と代えさせて頂きます。
2001年11月10日